「あなたの影は今、あなたの命令に従っていますか?」
プレイデータ:
推奨人数: 1名
想定時間: 1時間〜1.5時間
推奨技能: 【目星】 【アイデア】
あらすじ:
いつもの角を曲がった瞬間、世界から音が消え、空は不自然な四角形に切り取られました。
そこは距離、重力、自分自身の影さえもが「バグ」を起こした、最短にして最遠の閉鎖空間。
あなたは、この0mの袋小路から抜け出すことは出来ますか?
「闇の深さ」インジケーター:★★☆☆☆
【導入】
(探索者は仕事帰り、あるいは買い物帰りなど、日常の何気ない瞬間にこの事態に巻き込まれます。場所は「いつもの帰り道」を想定してください。 )
1.色の変化
あなたはいつもの帰り道。いつもの角を曲がります。夕暮れ時、街はオレンジ色に染まっているはずですが……ふと気づくと、周囲の音が完全に消失しています。車の走行音、遠くの話し声、風の音さえも聞こえません。目の前の路地は、まるで古い写真のように色が褪せ、空はどろりと赤く、雲一つ動かずに固まっています。
見上げれば電線が複雑に絡み合い、空を「不自然な四角形」に切り取っています。
2.探索者の違和感
ここで探索者に、自分の足元や感覚を確認させてください。
足音の変質: 一歩踏み出すと、アスファルトのはずの地面から「ポク、ポク」という、中が空洞の木琴を叩いたような、軽くて虚しい音が響きます。
《目星》
成功: 自分の影が、足元からではなく少し離れた場所から伸びていることに気づきます。まるで影だけが、あなたとは別の意志で歩き出そうとしているようです。
失敗: 自分の手が、夕日に透けて少しだけ透明になっているような錯覚に陥ります。正気度を失うほどではありませんが、世界から切り離されたような強い孤独感に襲われます。
3. 最初の問いかけ
背後から、風に乗って掠れた歌声のようなものが聞こえます。
「どこへ行こうというのかね。」
振り返っても誰もいません。ただ、あなたが今曲がってきたはずの角は、いつの間にか「直角の行き止まり」に変わっています。
戻る道はなく、あなたは左右にぐにゃりと曲がった奇妙な路地を進むしかありません。
【第一の路地:電柱柱の行列】
(このエリアでは、電信柱が「目印」ではなく「迷わせるもの」として機能しています。探索者がいくら歩いても、景色がループしているように感じさせることがポイントです。)
1.歪んだ遠近法
前へ進むほど、道が細くなっていくような感覚に陥ります。
左右に立ち並ぶ電信柱は、あるものは異常に短く、あるものは空高く伸び、まるで意思を持ってあなたを囲い込んでいるようです。
ふと気づけば、電信柱に貼られた町名看板の文字がすべて「どこか」に書き換わっています。
2.脱出への目星
ここで探索者に《目星》を振ってもらいましょう。
《目星》
成功: 電信柱が作る影に違和感を覚えます。 夕日はあなたの背後にあるはずなのに、影は前へ、横へ、あるいは「真上」へとバラバラに伸びています。 その中でひとつだけ、路地の壁を這い上がり空の「四角い穴」に向かって真っ直ぐに伸びる太い影を見つけます。
失敗: 電信柱の放つ「ジジジ……」という電気のノイズが、誰かの囁き声のように聞こえます。 「あっちだよ、こっちだよ」と惑わされ、自分が今どちらを向いているのか分からなくなります。 (正気度ポイント減少の必要はありませんが、混乱を促してください。)
(探索者が「影」の不自然さに気づき、その「空へ伸びる影」に沿って歩こうと決めたとき、空間が変質します。)
あなたがその影を踏んだ瞬間、周囲の電信柱がバタン、バタンと、まるでおもちゃの積み木が倒れるように折り重なっていきます。視界がぐにゃりと歪み、次に目を開けたときには、左右を高いショーウィンドウに囲まれた「鏡の路地」へと入り込んでいます。
【第二の路地:窓の中の別人】
(このエリアの壁は一面のショーウィンドウ、あるいは民家の大きな窓になっています。探索者は「鏡に映る自分」を観察することでしか、正しい道を見つけられません。)
1.虚像の街
辿り着いたのは、両側を高いガラス窓に囲まれた細く長い路地です。夕焼けの赤がガラスに反射し、視界はチカチカと眩しく奥行きが掴めません。
ガラスにはあなたの姿が映っていますが、そこには「ここ」にはない街灯が灯り、知らない花が咲いています。鏡の中の世界の方が、現実よりもずっと正しい場所のように見えてしまいます。
2.脱出への目星
ここで探索者に《目星》を振ってもらいましょう。
《目星》
成功: あなたは決定的な違和感に気づきます。 鏡の中のあなたは、あなたの動きを模倣している…のではありません。 鏡の中のあなたが「右手を挙げる」と、コンマ数秒遅れて「現実のあなたの右手」が勝手に持ち上がるのです。 主導権はあちら側にあります。そして鏡の中のあなたは、無表情のまま、行き止まりに見える壁の「一点」を指差しています。
失敗: 鏡の中の自分と目が合います。 あなたは瞬きをしましたが、鏡の中の自分は「瞬きをしませんでした」。 自分という存在が書き換えられていくような、形容しがたい恐怖が背筋を走ります。 (SANチェック:0/1)
→目星95以上出した場合は【「END 反転した世界」へ】
(探索者が「鏡の中の自分」の指示に従い、何もない壁に向かって歩き出すと、ガラスが水面のように波打ちます。)
指差された壁に触れた瞬間、冷たい感触とともに、あなたの体はガラスの向こう側へと吸い込まれます。視界が反転し、左右が逆転する感覚。次に顔を上げると、そこはもう鏡の路地ではありません。
色を失った真っ白な壁と、地面に描かれた「落書き」だけが残る、最後の袋小路です。
【第三の路地:チョークの出口】
(このエリアは、これまでの歪んだ路地とは一変し、真っ白な壁に囲まれた静かな袋小路です。音も風も一切なく、探索者は「書きかけの絵の中」に閉じ込められたような感覚に陥ります。)
1. 白紙の終着点
鏡の向こう側を通り抜けた先は、装飾のない真っ白な壁が立ち並ぶ静かな袋小路でした。正面には古びた木の扉が一枚、壁に貼り付くように存在しています。
しかし、その扉には取っ手も、鍵穴も、隙間さえもありません。
ふと足元を見ると、コンクリートの地面に子供が描いたような「鍵の落書き」があります。
白いチョークで描かれた、どこか歪な、でも古風な鍵の絵です。
2.脱出への目星
ここで探索者に《目星》を振ってもらいましょう。
《目星》
成功:あなたは不思議な光景を目にします。 二次元の落書きであるはずの「鍵」が、夕日の影を落としています。 目を凝らせば、その輪郭は地面から数ミリ浮き上がっており、まるで「そこにあるのに、描かれているだけ」のような奇妙な実体を持っています。
失敗:ただの落書きにしか見えません。 しかし、耳を澄ませば扉の向こう側から誰かが「クスクス」と笑うような声が微かに聞こえてきます。 焦りが募りますが、何度見てもそれはただの白い線でしかありません。
(探索者がその落書きを「摘み取ろう」とした時、物語は動きます。)
あなたが指先を地面に這わせ、チョークの線に触れた瞬間――。
指先に「冷たい鉄の感触」が伝わります。
指を持ち上げれば、地面の落書きは消え、あなたの手の中には「白く粉を吹いた、重たい鉄の鍵」が握られています。その鍵を扉にかざすと、鍵穴のないはずの木の表面に、吸い込まれるように黒い穴が開き、カチリ、と心地よい音が響きます。
【エンディング】
【全てのギミックを解除し、鍵で扉を開けた場合】
扉を押し開けると、眩い光とともに、街の雑踏が津波のように流れ込んできます。救急車のサイレン、遠くの駅の電光掲示板、誰かの話し声。振り返れば、そこにはいつもの電信柱と、見慣れた路地があるだけです。
あなたのポケットを探れば、先ほどの鍵はもうありません。
代わりに、「ぐにゃりと曲がった、白いチョークの破片」が一つだけ、転がっています。
「どこへ行こうというのかね」
もう、その声は聞こえません。
あなたは、ただの「方向音痴」だった自分に戻り、家路につくのです。
END「楽しい方向音痴」
【脱出を諦める、または判定ミスにより脱出不可となった場合】
あなたは出口を見つけられず、何度も同じ角を曲がります。次第に足音は聞こえなくなり、体はチョークで描かれた絵のように平面的になっていきます。
ふと気づくと、あなたは路地の壁に描かれた「落書き」になっていました。
誰かがいつか、この空間に現れ、あなたを摘み取ってくれるまで、あなたはその四角い空の下で、永遠に夕暮れを眺め続けることになります。
END「助けを待つ壁の落書き」
【第二の路地、鏡ギミックでファンブルを出した場合】
あなたは強烈な違和感に襲われます。
目の前にはいつもの街が広がっていますが、看板の文字はすべて反転し、時計の針は逆に回っています。驚いて路地のショーウィンドウを振り返ると、ガラスの向こう側に「正しく、文字が反転していない世界」が見えます。
そこでは、もう一人のあなたが、安堵した表情で家路についていく後ろ姿が見えました。
あなたは「鏡の中の住人」として、偽物の街に一生閉じ込められるのです。
END「反転した世界」
【あとがきと感想】
ここまで読んでいただきありがとうございました!
いつもの帰り道で起きた不思議な現象…探索とギミックで脱出を図るリアル脱出ゲームのような世界観を作りたくて、気が付いたらこのシナリオを作っていました。使う技能が少なくサクっと進めれるので、TRPG初心者の方にもオススメです。電柱、鏡、壁、そして影…そして無事に現実世界に戻れたら…ただの方向音痴だった…。ふとした日常から起きる不思議な体験をぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
テストプレイをしてみて…
・ギミックについて
基本的には《目星》でどうにかなると思っていますが、情報が足りない、どうしたらいいのか分からない…という場合は《アイデア》でヒントを出すと進めやすいかもしれません。
・時間制限について
基本的にサクサク進めれるシナリオではあると思いますが、緊張感を出すために時間制限を設けるのもオススメです。
例えば電柱から黒い手が足を掴もうとしている、鏡の自分がこちらに近づいてきている気がする…等でより緊張感を出すと面白いかもしれません。

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