【TRPG】「タイトル」【シナリオ】

短編シナリオ

「この物語の『終わり』は、あなたがページをめくる前から決まっていた。」

​プレイデータ:
推奨人数: 1名~2名
​想定時間:~1時間
推奨技能: 特になし

​あらすじ:
​蝉時雨の降り注ぐグラウンド、焼け付く土の上に横たわる「透き通るほど白い肌」の少年・ルカ。
記憶を失った彼が抱きしめる一冊の古びた絵日記を頼りに…冒険へ。
会話を通じてルカの願いを叶えていく先に待っているのは、温かな救いか、それとも燃え落ちるような真実か。

​闇の深さ:★★☆☆☆

【導入】
​1. 真夏の余暇
​蝉時雨が降り注ぐ、ある休日の朝。
あなたは以前から計画していた通り、清々しい汗を流そうとグラウンドへ向かいます。

​今日は絶好の運動日和です。雲一つない青空の下、照り返す日差しが肌を焼くようです。さて、グラウンドに到着したあなたですが…その視界の端に、夏の景色には似つかわしくないものが映り込みます。

​2. 白昼夢のような少年
​焼け付くような土の上に、一人の少年が横たわっています。
年齢は10歳前後でしょうか。驚くべきは、その姿です。

​彼は、真夏とは思えないほど透き通るような白い肌をしています。まるで、描かれるのを待っている真っ白な画用紙のように。その腕には、一冊の古びた日記を大切そうに抱え込んでいます。

​あなたが駆け寄ると、少年は眩しそうに目を細めながら、ゆっくりと上体を起こします。

​少年:「…えっと、ここは? 僕は…なんでこんなところに……?」

​不安げな瞳であなたを見上げ、ギュッと日記を抱きしめる少年。彼は怯えたように、しかし絞り出すような声で言葉を紡ぎます。

​少年:「ごめんなさい…僕、自分の名前が『ルカ』だってこと以外、何も思い出せなくて。お兄さん(お姉さん)は、ここで何をしていたの…?」

3. 色彩を失った絵日記
(​あなたが問いかけたり、日記について触れたりすると、ルカは躊躇いながらも、その表紙を開いて見せてくれます。)

​それは絵日記でした。しかし本来そこにあるはずの鮮やかな思い出は、ひどく汚れたり掠れたりしていて、ほとんど判別することができません。まるで誰かに消しゴムで消されたか、あるいは書き足されるのを忘れたかのように。

​ルカは、かろうじて判別できる一ページを指差します。

​ルカ:「この日記にある場所に行けば…僕、何か思い出せるかもしれない。でも、僕一人じゃどこへ行けばいいか分からなくて。…お願いです、僕を連れて行ってくれませんか? まずは、ここへ行きたいんだ。」

【商店街】

1. 記憶の断片:虫食いの絵日記
​ルカが差し出した日記のページは、そこだけがまるで「描きたて」のように鮮やかです。

​日記の紙自体はひどく古ぼけているのに、そのイラストだけは色鉛筆の筆圧さえ感じられるほど鮮明に、肉屋、八百屋、本屋が立ち並ぶ賑やかな通りを描き出しています。中心には、手を繋いだ二人の男の子。しかし、添えられた文章はひどく欠落しています。

​【日記の内容】
「きょう……とお母さ…てんがいに……ました。
お……ものがたく……て、まよっ……、ぼくがいち……なのはドー……!
おそとで……ら食べるのは、さいこうに楽……おいしか……す。」

(全文↓
「きょうは、お父さんとお母さんとしょうてんがいにいきました。
おいしいものがたくさんあって、まよっちゃったけど、ぼくがいちばんすきなのはドーナツです!
おそとで歩きながら食べるのは、さいこうに楽しくておいしかったです。」)

​ルカ:「…ここ、どこなんだろう。でも、ここに行けば…僕、何か大事なことがわかる気がするんだ」

​2. 探索:活気あふれるアーケード
(​PLが「商店街」だと気づき、ルカを連れて行くと、そこには日記を具現化したような景色が広がっています。)

アーケードの天井を埋め尽くす色とりどりの提灯。昼時を告げる賑わい。揚げたてのコロッケの香ばしい匂いと、甘いお菓子の匂いが混ざり合い、あなたの鼻をくすぐります。…それは、あまりにも『理想的な商店街』の姿です。

​ルカは初めて見る世界に圧倒されたように、けれどどこか懐かしそうに目を輝かせます。

​ルカ:「すごい…! この日記の絵、そのままだね! お兄さん(お姉さん)は、こういう場所によく来るの? …わあ、いろんな匂いがする。僕、お腹が空いてきちゃった。」

​(ここでは絵日記に書かれた食べ物を食べたり、商店街にあるようなもの(ガチャポン等)で遊んだり、自由にRPして遊んで下さい。)

​3. 変容:新しく刻まれる「声」
​ルカが笑顔で商店街を楽しみ、PLとの心の距離が縮まったその時、日記に異変が起こります。

​ルカが立ち止まり、先ほどのページをもう一度開きます。すると、あなたの目の前で、何もない余白に新しい文字がじわじわと浮き上がってきます。 まるで、今まさに誰かがペンを走らせているかのように。

​【新しく刻まれた一文】
「それはきっと楽しくて、あたらしいせかいが広がっているんだね。いつかいっしょにいこう!」

​ルカ:「…あれ? さっきまで、こんな文字あったかな。…僕、ここに来るのは初めてのはずなのに。誰かが、この場所のことを話してくれていた気がする。…一体、誰なんだろう。」

【踏切】

1. 期待:未知なる音への興味
​商店街を後にしたあなたたちに、ルカは期待に満ちた顔で次の一ページを見せます。そこには、音だけが鮮明に浮かび上がるような不思議な文章が綴られていました。

​ルカがめくったページ。絵はほとんど見えないほどに掠れています。ただ、幼い筆致で一生懸命に「音」と「ドキドキ」が書き留められています。

​【日記の内容】
「ぼくは今日、すごいものを見たんだ!お母さんと いっしょに おさんぽに いったときに、とおくから『カンカンカン』という おとが きこえてきた。
近くに いってみると、黄色と 黒の しましまの ぼうが、ゆっくり おりてきました。ぼうが さがると、車も 人も みんな ピタッと とまりました。みんなが まっている あいだ、音だけが ずっと なっていて、なんだか ドキドキしたよ!」

​ルカ:「…ねえ、これってどんな所なの? 全然想像がつかないや。」

(PLが「踏切」だという事が分かれば連れて行ってもらいましょう。)

ルカ:「えっ、知ってるの!? 本当に!? お願い、連れていって!」

​ルカはあなたの手をぎゅっと握り、期待に胸を膨らませてぴょんぴょんと飛び跳ねます。その手は、真夏の暑さの中では驚くほどひんやりとしています。

​2. 邂逅:日常の境界線「踏切」
​あなたが導いたのは、町外れにある古い踏切でした。

​錆びついた鉄の柵、どこまでも続く平行なレール。最初は静かなものでした。しかし、足元から微かな地響きが伝わってきた瞬間、ルカの肩がびくりと震えます。

​――カン、カン、カン、カン……

​警告音が辺りに響き渡り、黄色と黒の縞模様の棒が、世界を遮断するようにゆっくりと降りてきます。

​ルカ:「あっ……! もしかして、これ……!」

​直後、凄まじい風圧と轟音と共に、鉄の塊が目の前を駆け抜けていきました。ルカはその風に煽られながらも、瞬き一つせずにその光景を焼き付けています。

​3. 確信:違和感の芽生え
​電車が通り過ぎ、再び静寂が戻ると、踏切の棒がゆっくりと上がっていきます。ルカはしばし呆然としていましたが、何かに導かれるように日記を開きました。

​日記の余白に、またしても新しい文字が刻まれています。それはまるで見えない誰かが、ルカの体験をリアルタイムで補完しているかのようです。

​【新しく刻まれた一文】
「ぼくが本で見たことあるゆうえんちとはちがうね!いつかいっしょにいこう!」

​ルカ:「…ねえ。世界って、こんなに速いの? 僕が…僕が知っている世界は、もっとゆっくりなんだ。車を動かすのも、もっと、こう……慎重に、ゆっくり動かすんだよ。」

​ルカの言葉は、どこか遠い場所を見ているようです。彼は自分の肌の白さを見つめ、何かに気づきそうになりながら、日記を強く抱きしめました。

​ルカ:「もう少し…もう少しで、思い出せそうなんだ。……次の場所へ、行ってもいい?」

【公園】

1. 期待:最後の手がかり
​夕闇が忍び寄り始めた空の下、ルカは最後の一ページを開きます。そこには、擦り切れた記憶の隙間を埋めるような切実な願いが記されていました。

​日記の文字は所々消えかかっていますが、最後の一文だけは、まるで今書かれたばかりのように、驚くほどはっきりと残っています。

​【日記の内容】
「きょうは、……おわってから近くのこ…んへ行きました。
さいしょに、大すき……べりだ……した。上…下までいっきにすべ……と、風……んびゅんあたって……きもち…った!
そ…と、ブラ……だれが……くこげるか、みん……うそ…ました。空に……そう…くらい……げたよ!
次はきみとあそびたいです。」

(日記本文↓
「きょうは、学校がおわってから近くのこうえんへ行きました。
さいしょに、大すきなすべりだいをしました。上から下までいっきにすべると、風がびゅんびゅんあたって、とてもきもちよかったです。
そのあと、ブランコでだれが一番高くこげるか、みんなときょうそうしました。空に足がとどきそうなくらい高くこげたよ!
次はきみと遊びたいです。」)

​ルカ:「…『きみ』って、誰なんだろう。ここも、きっと僕が行ったことのない場所だ。……お兄さん(お姉さん)、わかる?」

​2. 体験:五感で知る「外の世界」
​PLに導かれ、辿り着いた公園。そこには、巨大なクジラの滑り台や、少し錆びたブランコが夕日に照らされて立っています。

​錆びた鉄の匂い。学校帰りの子供たちの無邪気な笑い声。オレンジ色に染まる砂場…。ルカにとって、それは五感のすべてを揺さぶる新鮮な衝撃でした。

​ルカ:「ここは、みんなが遊びに来る場所なんだね。…ねえねえ! どっちがおすすめ? 僕、全部やってみたい!」

• ​滑り台を選んだ場合: ルカは階段を駆け上がり、頂上で大きく手を振ります。「見ててー!」という声とともに滑り降りると、その勢いのままあなたの元へ飛び込んできます。「すごいね! 風が、風がびゅーって!」…全身で『風』を表現する彼の姿は、あまりにも眩しく映ります。

• ​ブランコを選んだ場合: 冷たい鎖を握りしめ、一生懸命に足を動かします。あまり高くは揺れませんが、ルカは空を見上げて満足げに笑います。「座っているだけなのに、空が近くに感じるよ!」

• ​砂場を選んだ場合: 「こうして投げて遊ぶのが夢だったんだ!」と、不器用な泥団子をあなたに投げます。力及ばず足元に転がる泥団子。それでも彼は、いたずらっ子のような笑顔を見せます。

(PLもルカと遊んであげて下さい。)

​3. 覚醒:上書きされる「現実」
​遊び終えたルカは、額に薄っすらとあまりにも美しい汗を浮かべ満面の笑みで日記を開きます。
日記の余白に、新たな、そして今までで最も強い想いが込められた一文が刻まれます。

​【新しく刻まれたメッセージ】
「ぼくも外に出たい、ぜったいにいっしょにあそぶんだ。」

​メッセージを読み、次のページをめくった瞬間…ルカの動きが止まります。彼は目を見開き、何かに怯えるように、あるいはすべてを理解したように、そっと日記を閉じました。
ルカは、オレンジ色に染まる公園、笑いさざめく子供たち、そして目の前にいるあなたを、慈しむように、ゆっくりと見渡します。

​ルカ:「…僕、思い出しちゃった。」

​その声は、蝉時雨に溶けてしまいそうなほど静かでした。…彼の視線の先、世界の端っこの『空』が、まるで紙が燃えるように、少しずつ白く剥がれ落ち始めています。

【病院】

​1. 終着点:静寂の病室
​ルカに手を引かれ、辿り着いたのは夜の病院でした。
かつての暑さは消え、廊下にはあなたの足音だけが虚しく響きます。

​ルカ:「ここだ…。僕は、ずっとここにいたんだ」

​ルカはベッドに腰掛け、窓の外に広がる街の灯りを見つめます。公園、家々の窓、遠くの街並み。それは彼がずっと、窓越しにしか知らなかった世界でした。

​ルカ:「幼馴染がね、毎日お見舞いに来て、外の話を教えてくれたんだ。…甘いものも、速い乗り物も、公園の遊びも。僕は全部、彼が運んでくれる言葉の中でしか知らなかった。
ここで食べるご飯はあんまり味がしなくてさ、今日食べたものは僕の人生の中で一番美味しかった。僕が知ってる車は凄くゆっくりでね。いつも彼が運転してくれてたんだよ。その上で僕はいつも移動してた。公園だっていつもここから見てばっかり。初めて風や空を近くに感じたんだ。」

​ルカは愛おしそうに日記を撫で、あなたに向き直ります。その瞳には、嘘偽りのない感謝が宿っていました。

​ルカ:「ありがとう。今日は本当に幸せだった。きっと君たちが、来られなくなった彼の代わりをしてくれたんだね。…彼に伝えて。夢を叶えてくれてありがとうって。」

​ルカが日記をあなたに手渡すと、その頬を一筋の涙が伝います。…直後、瞬きをした瞬間に少年の姿は夜の闇に溶けるように消えてしまいました。手元に残った、一冊の日記の重みだけを残して。

​2. メタフィクション:作者の独白

​…ここで、僕のペンが止まった。君たちのおかげで、彼を最高の形で送り出してあげられそうだ。

​僕は彼……ルカと約束していたんだ。将来小説家になって、君の物語を書くよって。それが、外に出られなかった彼の、たった一つの願いだったから。…だから、君たちに決めてほしいんだ。…この物語のタイトル、何がいいと思う?

あ、それとさ。日記の最後のページは見たかい?

​3. 真実:日記の最後の一頁

​あなたが日記の最後のページをめくると、そこには今までになかった「完成された景色」が描かれていました。

​【最後の日記】
「ぼくは今日はじめて外にでた! まちはひとがたくさんいて、いろんな人のこえが聞こえたよ! はじめて食べたドーナツ、すごーくおいしかった! そのあとはでんしゃってものを見た! はやかった!公園もね、楽しかった!初めて外で誰かと遊んだんだよ! ……今日のことはぜったいわすれない! さいこうの思い出です。お兄ちゃん(お姉ちゃん)どうもありがとう!!」

​そして、1つ忘れていたね。彼が思い出したあのページ。

​「ぼくがしんだら、ぼくをしゅじんこうにしたものがたりをつくってほしい。きみはもじをかくのも、つたえるのもじょうずだからね。そのときは、いろんなところにいっしょにいこう。やくそくだからね!」

​…僕と彼の約束は、今日、君たちのおかげで果たされた。物語はこれで終わり。
ルカと一緒に旅をしてくれてありがとう。

【GMの正体と真相】

ルカと僕は幼なじみ、そして親友だった。ルカは小さい頃から身体が弱く、ずっと入院していた。僕は学校終わり、毎日の様にルカの病室へと足を運んだ。いつもベッドに座り窓の外を見ているルカ。僕はその日あったことを何でもルカに話した。
日に日に元気がなくなっていくルカ。僕はそんなルカに元気になって欲しくて、ある日日記を書くことにした。今日行った場所、どんな風に過ごしたか、どんな気持ちになったか。日記を通して病院の外の世界をルカに伝えた。そしてそれを見たルカは、僕の日記にいつもコメントを残していた。様々なコメントを残してくれたが、最後はいつもこの一言だった。
「一緒に行こう。」

ある日、いつものように病室へと向かうと、そこにルカの姿はなかった。看護師に聞くと夜に病状が悪化し、そのまま帰らぬ人となったとのことだ。

そして僕がルカに渡していた日記の続きにルカからのメッセージがあった。
「ぼくがしんだら、ぼくをしゅじんこうにしたものがたりをつくってほしい。きみはもじをかくのも、つたえるのもじょうずだからね。そのときは、いろんなところにいっしょにいこう。やくそくだからね!」

ルカと過ごした日々が忘れられない。僕の心に大きな穴が空いた。それの穴を埋めるように、そして約束を果たすようにと僕は勉学に励んだ。

そして大人になり、僕は小説家となった。ずっと書きたかった作品がある。それはあの親友との思い出のひとときと、親友との約束。

【あとがきと感想】
ここまで読んでいただきありがとうございました!
GMもゲームに直接参加出来たらなと思って作った&GMが作った物語という設定でシナリオを作ってみたくチャレンジしたシナリオです。最初はPLに自由にルカと遊んでもらいつつ、最後のネタバラシで少しでも驚かせるような展開になれたら嬉しく思います。

テストプレイをしてみて…
・基本的にルカには自由に会話をさせてあげるのがオススメ。
グラウンド→商店街→踏切→公園に行く間でルカがPLに対して日常生活を聞く会話をしたり、外の世界に興味があるという会話をするとPLが途中で「この子はもしかしたら…」というのを察しやすいかもしれません。

・病院生活と病院の外の世界へのギャップをところどころ出すのがオススメ。
甘い食べ物と薄い味の食べ物。早く動くものとゆっくり動かすもののように外の世界のもので経験したことがないもの、病院の中でしか経験できなかったもののように、PLとの会話の中でその対比が出せるといいと思います。

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